「何を仰るんですか、レナール様!」


「はい?」


「レナール様の気分の問題ではありません。

殿下はゆくゆくはこの国の君主となられるお方です。

その時政治を助けるのは貴族でしょう?

今学園に在籍する生徒達でしょう?


殿下、人気というのは未来に対する資本です。

無いかあるかだったら、絶対にある方がいい。

たとえその人気が殿下にとって鬱陶しかったとしてもです!」


少女はズバッと言い切った。

紫色の瞳は相変わらずこちらを見据えている。


「クク…あはははっ」

「レナール様?」

急に笑い出した俺をヨルノが心配そうに覗きこむ。

「つまり、写真が売れれば君には金が、私には人気が舞い込むわけだ。

相互利益があるのだから放っておけと。

そういうことだね?」

「誰が写真を売ってるのかは存じませんが、仰る通り。

無理に取り締まる必要もないかと」

この期に及んで自分のした事と認めない根性には頭が下がる。


俺はこの国の王子様だ。

家柄のいい令嬢は手縫い刺繍片手にすり寄り、そうでない令嬢は遠くから見守る。

そういう存在だ。

そんな学園の王子様を商売道具として利用し、

本人に呼び出されながら、いけしゃあしゃあと自己弁護。

挙げ句の果てに王子を説教ときた。

自分の商売を守る、そのためだけに。


令嬢としては最低だ。
図々しすぎる。

生徒としても適切な行為でない。
正直悪質だ。


でも、
面白いか面白くないかでいえば――断然面白い。

こんなワクワクさせてくれる、ぶっ飛んだ令嬢は今までみたことがない。



面白いんだが――

ただ、このまま俺はナメられっぱなし、彼女は利益を維持したままで終わるというのは、少々悔しい。