振り向くと、
昇降口の扉の横に
一人の女子生徒が立っていた。


…誰




「雨すごいね」



そいつは
当たり前の様に話を続けた。



見たことない顔。

ていうか、
クラスメイトさえ覚える気のない俺が
覚えてるわけがないか。



がちで誰?




不機嫌MAXで睨みつけている俺に気づいたのか、



「わ ごめん、つい…」



言葉が途切れ、そいつは若干俯いた。



ま、いいか



気づくと、
雨はさらに強くなっていた。






「あのー…」



帰ろうとした俺は
またもや引き止められた。



「…何」



振り返ると、
目の前には赤地に水玉の傘が差し出されていた。



「使って、下さい」



柔らかな笑顔で言う。




「…要らん」



「あたしは2本持ってるから!」



知らねえよ



ほらほらっ、と鞄から取り出し
開いた折り畳み笠は

骨組みが折れてた。



「あ、あれっ?」



何こいつ。





「要らねえから。」



そう言い捨て、

雨の中へ踏み出し
歩き出した。





すると



さぁっ、と音がして


空が赤く覆われた。