「あの…皆さんの夏休みのご予定は御座いますでしょうか?」

期末試験も終わり、後は夏休みを待つばかりとなったある日、加代が水原家の茶の間で切り出した。

「なんや?加代ちゃんはどっか行くんやろ?ええなぁ。」

くーと戯れていた紗季がすかさず言うと

「待て紗季。加代は私達の予定を聞いているんだぞ。質問に答えてから次の事を聞け。」

頼子が庭で薪割りをしながらたしなめる。

「そやな、すまんな~加代ちゃん。で、なんやったっけ?」

「夏休みのご予定ですわ。紗季様はご実家に帰られますの?」
「う~ん。ウチは別にどっちでもええなぁ。今ん所、報告せぇっちゅう催促も無いしなぁ。」
「頼子様と奈都様は如何でしょう?」
「私か?私はいつもと変わらん。学校がない分、師匠にこき使われるだけだな。」
「頼子、頼良さんは普段は一人でやっているんだから、家にいる時にはお手伝いしないと。」
「だよねぇ?奈都ちゃんは分かってるなぁ。私だっていつまでも若く無いんだよ?親孝行は早目にした方が良いと思うなぁ。」

茶の間にいつの間にか現れた頼良が奈都の後ろで頷いている。

「頼良さん…気配消して背後に立ったらんといてあげぇな。奈っちゃん固まっとるで?」
「良いんだ紗季。油断している奈都が悪い。」
「せやかて頼子。奈っちゃんかて急にす…」
「いっ!良いのよ紗季ちゃん!私が油断したのがいけないのよ!ねぇっ?」

奈都が慌てて紗季が言いかけた言葉を遮った。

「どうしたんだ奈都。そんな大声て言わなくてもきこえるぞ。」

庭で顔をしかめながら頼子は薪を手早く纏めて片付けると、茶の間に上がった。
加代がいそいそとおしぼりと頼子の為のお茶を用意して手渡した。