「私はないが、奈都は予定あるか?」

丁度戻ってきて話を聞いていたらしい奈都を見もしないで言うと

「なんで気配消してたのに当てるかなぁ…」

頼子の背後に回り込んでいた奈都が悔しそうに言った。

「馴染みの気は分かりやすい。」

鼻で笑う頼子に加代は見惚れている。

「私も予定はないけど…」

苦笑いして奈都が言うと

「ではこの後、是非私の家に来て頂けないでしょうか?」

加代は慌てて言った。

「別に構わんが、急にお邪魔して良いのか?」
「父と母が等々力から話を聞いたらしくて、早くご招待しなさいと言うものですから…すみません本当に急で…」
「そう。加代ちゃんも大変ね。私達で良ければご挨拶くらいはさせて頂くけど。」
「そうだな。話は早い方が良い。」
「ありがとうございます。早速、外に待機している等々力に伝えますわ。」

喜んで飛んでいきそうな加代を二人が掴まえた。

「待て。」
「待って。…一緒に教室に鞄を取りに行きましょう。」
「そうだな。行く場所は同じだしな。」
「私は嬉しいですが、宜しいのですか?」
「じゃぁ私の鞄も持ってくるわね。」

自分の席に向かう奈都を見ながら、加代がこちらに向かう様子を見ていたんだなと思った。

「行きましょうか。」

戻ってきた奈都が頼子と反対側に付いて加代をサポートするつもりなのがわかる。
その成果が、車まで一度も転ばせなかった事だった。

「お久しぶりでございます。頼子様、奈都様。どうぞお乗り下さいませ。」

恭しく車内に通され、スムーズに車は発進した。
中にはクーも待っており、加代はホッとしたように抱き上げている。
何分乗っていたのか、目の前に豪邸と呼べる建物があった。

「あちらが坂田邸でございます。」

まさに邸。豪邸であるその姿に唖然とした。