――… ある日のこと。 「おかえりなさい。」 「……ただいま。」 こういうとき、いつもなら返事はない。 けど、彼はたまに返事をしてくれた。 今日みたいに。 その度に、私の心は嬉しさで満たされる。 好きになってもらえたんじゃないかな? なんて、思ってしまうこともある。 そういうとき、私は必死に自分に言い聞かせる。 『勘違いしちゃダメ。 翔佑さんは優しいから、私のことを可哀想に思って「ただいま」って返してくれただけ。 …ただの気まぐれ、偶然。 だから、勘違いしないで。』 って。