あの頃のように

「……このお店、前から知ってたのに、こんなにケーキがおいしいなんて知らなかった。

駅の近くのお店っていつも混んでるし、なかなか入らないもんね」


ふたたび目を上げたユカは、それまで通りの明るい笑顔で。


(女の子にはちょっと退屈な話題だったかな)


そうだよな。

証券会社だの都ケミカルの会長がどうの。

男の世界の人脈の話を喜んで聞く女の子は少ないだろ。


そこからの俺は、ユカの話す無邪気な他愛ない話に笑顔で相槌を打っていた。



 * * *



「今日はありがとう」


喫茶店を出て、じゃあ、とばかりに、あっさりと手を振って去りかけるユカに。

すがるように、あわてて声を掛けていた。


「ねぇ、また会える?」