私の兄がそーゆー人だったなんて信じがたいことこの上ない件についての考察



掲示板を食い入るように見ている早苗の袖を引っ張って職員室をあとにした。

学校を出るとよりセミの声と蒸し暑さが際立つ。
腕捲りして腕を横に伸ばして上下に揺らしてる早苗はきっと頭がイカれてしまったんだと思う。

「家寄ってく?」

「誰の?」

「私の」

「さなぴょんの貞操はあげないよ?」

「お前大丈夫かよ」

「てかまっつんってお兄さんいたよね?やっぱ兄妹でぬぁあ!みたいなことあったりするの?」

「………」

「無視?…あぇ、まさか、ほんとに…?」

「お前…兄ちゃんのこと考えないようにしてたのに…」

「うそっガチ!?ちょ、ちょちょっ詳しく!詳しく話聞かせて!」

両手をガッチリ掴んでキラキラした目で私の顔を見上げてくる。

ごめん、多分早苗の期待してる内容じゃないんだよ。

「とりあえず、家で話そう」


 * * *



「ただいまー」

「おじゃましまーす」

靴を脱いで家に上がる。ひんやりとした空気がとても気持ちいい。

「先部屋行ってて」

「はいよー」

階段を登っていくのを見届けてリビングへ繋がるドアを開ける。

ソファに寝転がっている母がいた。

「帰ってたんだ」

声を掛けると腹筋を使って起き上がった。

「まーちゃん聞いてよ!パート仲間に国枝さんっているって言ってたでしょ?あの人私に向かって「太りました?」って言ったのよ!たしかに太ったけど面と向かって言うことないじゃない!ねぇ!?」

「まぁ、太ったからねぇ…」

「なによ、まーちゃんも国枝さんの味方?お兄ちゃんは「そんなことないよ」って言ってくれたのに!」