-麻紗の部屋-
兄の部屋を出たあとすぐに自室に戻った。借りた漫画をベッドの上で横になって読む。
正義感の強い主人公は犯罪者をばっさばっさと裁いていく。
兄の部屋に無断侵入した私は不法侵入で犯罪者だよ!殺せ!いっそ殺せよ!殺してくれ死神ぃぃいい!!
心臓麻痺になったフリをしてベッドに倒れる。時計の音がカチカチと鳴り響いた。
「はぁ…私何してんだろ…」
兄の部屋に無断で入ったことはもちろん罪悪感だけど、それ以上に心を蝕むのは、兄の部屋にあったホモ本。
気にしないふりをしてみたけど駄目だ。気になって漫画に集中できない…。
「兄ちゃん、って…ホモ、なのかな…」
呟いてみたらもっと心に突き刺さった。兄がホモ。…ゲイって言った方が適切なのかな?
いやそりゃたしかに女の気配全くないなぁとか好きなタイプ聞いたら「短髪」って即答されて限定されてるなぁ。しかもそこかよって思ったけどさ。
てかその時の私の髪型ベリーショートだったからもしや兄ちゃんは私のことを…!?だ、駄目だよ兄妹で…!みたいな妄想したっけ…。
……だって、だってさ!兄妹系とかめっちゃスリリングじゃん!愛し合う二人は実は腹違いで、とか、片方が養子だった、とか!めっちゃ王道パターンですごくハラハラドキドキするじゃん!
まぁ戸籍とDNA鑑定の紙調べたらちゃんと血の繋がった兄妹だったんだけどね。