高校二年生。一年のように先輩にビクつくことも三年のように受験に追われることもない自由な学年。
そんな素晴らしい学年のさらに素晴らしい夏休みに、予定が入っていないのをいいことに兄の部屋を模索することに決めた。
兄と言えどもやはり男!エロ本があったり、もしかすると私の裸の写真が隠し撮りされてたり!?このエロ猿め!
周囲に誰もいないのを確認してゆっくり兄の部屋のドアを開け、素早く部屋へ入る。
気分は完璧にくの一だった。
忍者のように足音を立てずにベッド脇に寄って下に手を突っ込む。
全神経を集中させて探る。
「…あった!」
本らしき物体が指先に触れた。
私はニヤリと笑う。計画通り…!
「ふふふ、兄ちゃんも悪よのぅ…」
どこかのお代官様みたいな台詞を口走って獲物をずるりと引きずり出す。
(……ばら、ぞく…?)
薔薇族と大きな文字で書かれたその本の表紙にはマッチョな男の人がボディービルみたいなポーズをして写っている。
この時点で私は背中に変な汗をかいていた。ついでに心臓が不定期に脈打っていた。
「えーと…つまり、ホモ用のエロ本ってこと、だよね…?」
水色をベースに清潔感溢れる兄の部屋。ミントの香りがしそうな空気。洗い立てのベッドのシーツ。ホモ本。そして、妹。
「……麻紗?」
「…兄、ちゃん……」
絶望的な顔をした、兄…。