こんな言い方は、ずるいのかもしれない。 たとえ崇文がこの先自分の事を忘れても。 自分の中には、崇文が残るだろう。 お互いに先へと進む為には、一番良いと思える答えだったはずだ。 進んだ先、また道が交わったら。 もっと違う答えが、用意できるかもしれない。 これ以上何も言わないと、佳乃は背を向けてドアへと歩き出す。 外には皆居るのだろう。 冷やかされるのは覚悟の上だ。