視線をものともせず向かってくる崇文に、佳乃は戸惑った。

てっきり自分の事はもう眼中にないと思っていたので、何を言われるのか分からない。

崇文の真っ直ぐな視線を受けると、あの夜のキスが思い出されてしまい、自然と眉間にしわが寄る。


(思い出させないで。何年かぶりのキスだったから、動揺してるだけ。)


愛想笑いでごまかそうとしても、笑えなくて。

会議室の中だから、距離はもともと遠くない。
だから、すぐに目の前に崇文が来てしまった。