“大人の男は、ギネスぐらい飲めないとな!”


笑顔でそう言った渚に、心の中で悪態を吐く。

室内が薄暗くてよかった。
佳乃にこの熱い顔を見られなくて済む。
彼女は美味しそうに飲んでいるが、自分には到底無理そうだった。


(さすが高村さん・・・大人だ!)


思わず見とれると、視線を感じた佳乃が崇文に微笑みかける。


「大丈夫ですか?もしお口に合わないのでしたら、私がいただきますよ?」

(間接キスじゃん!)


一口しか飲んでいないが、なんだか心が跳ねる。

「すみません、じゃあ・・・。」

「はい。」

かっこ悪い自分を、どう見たのだろうか。
とにかくそれが心配だった。

このままでは、彼女に頼ってもらえる大人の男には、到底なれそうもない。
崇文は何とか会話をしようと、渚に言われた言葉を思い出そうとした。