「それじゃあ、また明日来るからな」



「うん。
仕事あるんだから、ムリすんなよオヤジ」



「やれやれ、子どもが親の心配するな」




思ってた以上に元気そうだった慎吾くんの様子も確認でき、しばらく一緒にいたものの。

あまり長居しては却って疲れさせてしまうので、私と盆子原さんは一緒に集中治療室を後にした。



面会時間は決まっているんだけど、盆子原さんは実の父親なのもあって、また明日仕事前の早い時間に来るとの事だ。





病院の自動ドアをくぐり外に出ると、盆子原さんは一度くるりと私の方に向き直った。



「…とんだ心配をかけさせてしまいました。
すみませんね、雛子さん」



「い いえっ
大きなケガもなくて、安心しました…!」



確かに慎吾くんにはケガはなくて、大丈夫そうだったけど。

でも、ただ1つ今までの慎吾くんと様子が違っている事はと言えば、慎吾くんからは私の記憶だけがスッポリ抜けちゃっている事だ。



そう、まるで今までの事は何もなかったかのように、キレイさっぱりと…。