「……あの、慎吾く…」


「せのおさんってさぁ」



「えっ」



病室に2人きりになった時、そっと慎吾くんに言いたい事があって話そうかと思ったのだけど。

先を越して呼ばれてしまったので、黙って慎吾くんの言葉を待った。




「せのおさんってさぁ、年いくつなの?」



「………え?」



「だってさぁ、せのおさんってめっちゃ若いよね!
よくオヤジみたいな中年と付き合ってんなーって思ってさ」



「……………」



…冗談を言っているのかしら。

いくらケジメつける為だからって、今は盆子原さんもいないんだから、そこまでトボケなくてもいいのに。




「23くらい?
いや、ハタチかな。
まさか未成年だったりしてー!」



「…本気で、言ってるの?」



「あれ、怒っちゃった?
ごめんごめんっ
だってこんなかわいー子がオヤジの彼女だなんて、信じらんないんだもん」



「………………」



…冗談言ってるとは、思えない。

そもそも慎吾くんは、そんなウソが言えるようなタイプじゃないと思うんだけど。



…だとしたら……




――『ただ頭を打った痕があるので、しばらくは入院をして経過を見ていく――…』



まさか、それって。


記憶 喪失…って奴じゃあ…!