午後15時


案の定私が仕事に入るまで、盆子原さんからの電話やメールは返ってこなかった。


どの道夜にはきっと店の方に来てくれるだろうし、帰りは一緒になるだろう。



午前中の慎吾くんとの別れ方に、未だショックは隠せないけれど。

でも少しでも早く忘れる為にも、私はその分仕事に集中した。



だけど…



「ヒナ坊、手が止まってるぞ」



「ぁ…っ
す すみませんっ」



いくら集中しようと思っても、私が担当になっているサラダ作りをしていたら、どうしても慎吾くんの事を思い出してしまって忘れられない。




――『絶品だね』



笑顔で私の作ったものを喜んで食べてくれる、慎吾くんの大好物。


それが、こんなにもツラい思い出になっちゃうなんて思わなかったよ…。