「へぇ、雛子さんって仰るんですか。
すみません、今頃になって名前を訊くなんて失礼ですよね」



家に向かうまっすぐの夜道を、私はイチゴバラさんと並んで歩く。


イチゴバラさんの家はうちと同じ方角らしいと思ってたけど、それが慎吾くんの家だとわかると合点がいったなぁ。



「そんな事ないですよ。
って言うか、雛だなんて、ある意味名前のまんまって感じですよね」



あはは…と自虐ネタに自分で笑いながら、胸の内ではモヤモヤと戦っていた。


まさか私が、自分の息子とそんな関係になっていたとは夢にも思わないだろう。


今はまだどちらにも気付かれていないけれど、でもこのままイチゴバラさんとの関係を続けていたらいつかはバレてしまう。


それに、たとえ慎吾くんとの関係を絶っていても、慎吾くんと身体の繋がりがあったという事実だけは変わらないんだから…っ




「えぇ、本当に。
可愛らしくて、守ってあげたくなる。そんな女性らしい素敵な名前だと思います」



「あ…ありがとう ございます…っ」




スゴく純粋に、私を愛してくれているイチゴバラさん。


もしそんなイチゴバラさんに慎吾くんとの事を知られたら…どんなに傷付けちゃうだろう。



私は、これからどうしたらいいの…?