「お疲れ様、妹尾さん」



「…イチゴバラさんっ」



今日も仕事を終えた21時過ぎ。


いつもの場所で待ち合わせて、一緒に帰るのが日課になってきたイチゴバラさんとの時間。




「妹尾さん。
はい、今日もこれ」



仕事あがりの私にイチゴバラさんが手渡してくれたのは、冷たい缶コーヒーだった。


甘くてミルクも入った、カフェオレ。

これも、毎日の日課になってるの。




「ありがとうございます。
でも、そんなに気を遣われなくてもいいですよ」



「いえ、好きでやってるんです。何か妹尾さんにしてあげたくて…。
ご迷惑、でしたか?」



「そんな事っ
とっても嬉しいです」



イチゴバラさんの、私に対する好きって気持ちがスゴく伝わってくる。


こんな風に男の人に愛された事なんてなかったから、何だかくすぐったい。


でも、私もそんなイチゴバラさんの気持ちを大事にしたいって思うの。




「…妹尾さん」



「はい?
…ぁ………」



チラっとまわりに誰もいないのを確認したイチゴバラさんは私の肩を抱くと、そのまま顔を寄せ唇を重ねた。



「…ん……」



まだ残ってるスタッフたちが通りかかるかもしれないので、そんな長いキスではなかったけれど。

やがて合わせた唇を離したイチゴバラさんは、すぐに顔を赤くして照れ笑いをした。



「す すみませんっ
その、どうしても…っ」



「い いえっ」



いい年して、まるでお互い初々しい恋愛初心者みたい。


クスリと心の中で笑いつつも、でもあの事で動揺が顔に出ないよう、私も必死だったの。