思いがけない久保店長のポロリとこぼした本音に、私は息を飲んだ。




「それって久保店長、好きで結婚してないって事ですか…?」



人は適齢期になれば、結婚はするものだと思っていた。


なのに独身でいるのは、たまたま縁がなかっただけとか、或いは別れちゃったとか。
とにかく、そんな理由かなって。



「儂はな、そういうのに縛られるのが嫌なんだ。
ここで仕事してる方が、よっぽど楽しいわけ」



「は………」



縛られるだなんて。

でも仕事してる方が楽しいって言う久保店長の気持ちは、何かわかるな。


いつも見せる久保店長の創作料理は、本当にスゴいなって思ってたけど。
あれってやっぱり、好きじゃなきゃ出来ない事だもんね。



「…なるほど」



結婚よりも仕事に生きるって人生も、確かにかっこいいかも。



でも私は…独りでいたいほど、したい事もないし。

普通に恋愛して、普通に結婚、したいかなぁって思うかなぁ。