あなたがいたから

「それにね…未来ちゃん、ほんの一瞬だけど寂しそうな顔をしたから気になっちゃって。
何かあったの?」



「えっ?な…に、言ってる…の?」


未来は驚いた顔をするとそのまま廊下を走っていった。

驚いている智佳をそのままにして。




何?あの子。なに?なんであたしが思ったことがわかるの?
なんで、あたしの心に入ってこようとするの?


あたしは一人なのに。
あたしは…あたしは…あたしは…。



未来はパニックに陥っていた。
智佳の言葉を思い出しながら。



智佳の言ったことは正しかった。

確かにあの時、未来はほんの一瞬寂しそうな顔をしたのだ。


だから、未来はすぐに教室から出ていったのだ。誰にも見られないように。


なのにも関わらず、智佳はその一瞬を見逃さなかった。

兄である希望(ノゾム)にも気付かれることがなかったことを…。



学校のチャイムが鳴った。

学校のチャイムで我に返った未来はトボトボと体育館に向かった。


完全に遅刻だというのに。