「分かった。勝手にしろ」
「えっ」
「明日役所行って、届けもらってくる」
「…それって」
「決まってんだろ。離婚届だよ、離婚届」
吐き捨てるように言って、僕は勢いよく窓を閉めた。
やってらんねえ。
生憎、僕は妻の浮気を黙って見過ごせるほど人間できちゃいない。
リビングに戻り、まだ途中だった新聞紙を手にとる。
活字を追ってもなかなか頭に入らない。
仕方なく新聞紙をたたみ、僕はこれからのことを考えた。
明日からどうしようか。
親にも報告しなきゃな。
特にお袋は泣いて叫ぶだろう。
想像しただけで頭が痛い。
途方に暮れていると、僕の前に白い手が伸びてきた。


