「鈍感なんだよ、小西くん」


 不細工猫はもう一度言った。


「庄谷はね、小西くんと餌をあげるのが楽しいって言っていたよ」
「僕と?」
「うん。小西くんは、どう?」


 小さく息を吐き出して、野菜ジュースで喉を潤す。
 温(ぬる)くて不味くなっていたがノルマである1日一本をようやく飲み干した。
 ストローから口を離し、本人、いや、本猫を前にして、なんと言うべきが一瞬考え、そして口を開く。


「僕は、本当は猫があまり得意じゃないんだ」


 僕は苦笑して不細工猫を見下ろした。
 不細工猫も、真っ直ぐに僕を見上げている。


「だけど、庄谷が、あまりにも嬉しそうに餌を買ってくるものだから、言うタイミングがなくて」
「……私、迷惑だった?」


 ふてぶてしい不細工猫の声が、少し低くなる。
 チクリ、と胸が傷んだ。


「嫌いなわけじゃないんだけど」