僕は反射的に視線を横に向けた。
 視界の中に尻尾と足が短い茶色い毛並みの不細工な猫が写り混んだが、僕はその先のキャンパスの方と、逆の校門側を回し見る。
 が、それらしい人は見当たらない。


「鈍感なんだよ、小西くん」


 また女の声だ。
 僕は先程視界に入った不細工な猫に視線を戻した。


「お前か?」
「他に誰がいる」
「まさか猫が喋るなんて思わなかったから」


 不細工猫は退屈そうに欠伸をひとつ。


「で?」
「庄谷は本当に私のためだけに餌を買ってきてると思ってるのか?」
「違うの?」


 猫と喋ってるなんてあまりにも間抜けなので、僕はまた曇った空を見た。なるべく自然に。