「・・・そうですか。遺書が・・・」
「はい。今まで自分がしてきたことは自分で償う・・というような内容のものが書いてありました。他に見つからなかったのではっきりとは言えませんが、おそらく必要な分だけの青酸カリを所持していたのだと思います」

真里は矢野の教室にいた。机の上にはお詫びと言って受け取らせた菓子折りがある。

今日は教室は休みらしく、二人以外いないのが寂しく感じた。
「いつもは賑やかなんですよ」
そんな真里を察してか、矢野が言った。
「僕はまだ若いので生徒は子供ばかりなんです。だから、いつも賑やかで」
「楽しそうですね」
少し苦笑いした。

「書くときは静かに書くようにはさせているんですけどね」
「確かに。それも大切ですね」
真里も笑って返した。


「・・・それでは。わたしはこれで」
「はい。ありがとうございました」
真里が立ち上がると、矢野も立って頭を下げた。
「送ります」
「いえ。お気遣いなく!」
「車じゃなかったですよね?」
「でも駅まで近いですし、歩いていけますよ!」
「でも。外、雨ですよ?」
窓の外を眺めると、確かに雨が降っていた。
防音効果がある為か気がつかなかった。
「送りますね?」
真里は仕方なしに頷いた。