「片山さん。片山さん宛にお手紙です」
一課に戻ってきた真里は事務員に茶色で無地の封筒を手渡された。

職場に手紙とは誰だろうか?
裏側を見た真里は自分の目を疑った。
「矢野先生?」

そこには整った字で矢野尋と書かれていた。
急いで封を切ると、便箋を取り出して内容を読んだ。
しばらくすると真里は手紙をポケットの中に入れて走り出した。

太陽は既に沈んでいる。
通り過ぎる人が口々に寒いと言っているのが聞こえる。
しかし、走っている真里にはそんな感覚はなかった。

真里の頭の中は矢野からの手紙で埋め尽くされていた。




片山真里様

伝えておきたいことがあって筆を取りました。

ひとつはあなたが喫茶店で話していた推理が合っているということです。
正直、あの時は焦りました。
けれど、それと同時にあなたになら真実を託せる。そう思いました。

あなたは、世の中は悪いことばかりではないと僕に言いました。
確かに大好きな書道を続けられ。素敵な家族に恵まれ。生徒さんや友人、そしてあなたに出会えた。
幸せでした。

でも、僕にはやならくてはいけない事がもうひとつあります。
この事をあなたに押し付けたくはありませんでした。
けれどあなたに、十三年前と今回の事件の真実を明かして欲しいと思っています。
それと、春真君を三木家のお墓に移すこともお願いします。

頼みごとばかりではいけませんね。
迷惑をおかけします。
真里さん、ありがとう。


携帯電話を取り出して矢野掛けるが、繋がらない。野田も同じだった。
「お願い。これ以上自分を傷つけないで!」
心で叫びながら、矢野の教室へと向かった。