「・・・・もう大丈夫だな?」
「・・・・ゴメン」
「また謝る」
辰郎は軽く頭を叩いた。
「じゃ、私はこれで帰る。医者が言うには、急所から外れていたから傷もすぐに塞がるだろう。だとよ」
病室を出て行こうとする辰郎を矢野が呼び止めた。

「親不孝者でゴメンなさい」
そう言うと辰郎は笑顔で返した。
「何言ってんだ。尋は私の自慢の息子だよ」
「・・・・ありがとう」

矢野が気恥ずかしそうに笑うのを見ると、辰郎は手を振って病室を出て行った。

部屋には矢野が一人だけ残った。
「・・・・ゴメン、父さん」

小さな声でも十分に部屋に響いた。