矢野が三木に初めて会ったのは、矢野が教室を開いた日だった。
元々辰郎の教室に通っていた三木は息子を支えてくれという頼みを受け、矢野の第一生徒として来た。

「・・・春真兄ちゃん?」
矢野は目を見開いた。
その矢野を見て三木がくすりと笑う。
「それは俺の兄貴です。俺は三木冬樹といいます」
「あ・・・すいません」
「いえ。大丈夫ですよ」

三木は笑顔で矢野に接した。
テレビの話題。
最近読んで面白かった本の話。
自分の体験談。
いろいろな話を面白おかしく話しては矢野を笑わせた。

矢野にとって三木は、掛け替えのない友人になっていた。