矢野に向けて言う野田。
自分は全て分かっている。そう言っている目だった。

少しでも不自然な動きをすれば問い詰めてやろう。そう思って視線を向ける野田とは裏腹に、矢野は感心したように頷いた。

「確かに。そう考えるのが自然ですね」
「でしょう」
野田は続けた。
「これで私の推理は終わりです。真犯人が分かった以上早速、逮捕に乗り出そうと思います」
「姫山先生の息子の居場所を知っているのですか?」
「知ってるも何も。今こうして同じ空間にいるのですから」
矢野の眉が微かに反応した。
その様子を目にした野田は嬉しそうに目を細めた。

「十三年前に亡くなった女性なのですが、実は同じ時期に亡くなった女性がいましてね。我々はその女性と同一人物ではないかと考えました。・・・ええ。矢野先生も良くご存知の方です。矢野侑子。矢野辰郎の妻で、あなたの母親です」

真里と轟が同時に矢野を注目した。

「おそらく姫山と不倫関係だったのでしょう。そして生まれた子供。・・・いつまでしらばっくれるんですか?矢野・・いや、姫山尋さ・・・・・・・」

その時、鋭い光を持った物が素早い動きで野田の足の辺りを通り過ぎた。

そこを始まりとし、服に赤い染みが広がるのを見た一同はその光が刃物だと認識した。
野田は地面に膝を付く形になった。

刃物を持っていたのは、三木だった。