「まず、長江ですが。周囲の人の話を聞くと、とても自殺するような人間に思えませんでした。そこで我々は他殺の可能性があるのではないかと捜査をはじめました」

「それで、僕ところに来たのですね」
「ええ。まぁ、三木さんを怒らせてしまっただけになってしまいましたけどね」
三木と目を合わせた。

「そして、長江の調査をしていた矢先に水沢が殺されました」
「待ってください!水沢先生は事故で無くなったんじゃないのですか?」
口を挟んだのは三木だった。

「まぁ、確かに。水沢を轢いた人は故意にやっては無いでしょう。しかし、それが計算されていたことだとすれば?」

「それは少々こじつけではないですか?」
今度は矢野が言った。

「事故までも仕組むというのは、さすがに無理だと思いますが」

「それが、この事件の犯人の思う壺なんです。他殺じゃないように見せる。犯人の狙いの一つだと思うんですよ。そして、こんなことをしようと思う背景には、十三年前が関わっています。片山も調べていたので話を聞いたと思いますが、あの事件で亡くなった三人は家族ではなかった。その中の一人に、三木さんのお兄さんがいました」

真里は三木を横目で見たが、三木に変化はなかった。

「しかし。姫山には息子がいた。なら、その息子はどこに行ったのか。・・・矢野さんは分かりますか?」

「さぁ」


得意気に野田は笑った。
「その息子がこの事件の犯人なんですよ」