「・・・ここなら静かに話が聞けそうですね」
矢野は表通りから少し外れた、落ち着いた雰囲気の流れる喫茶店を選んだ。

二人はコーヒーを注文する。
「ケーキとか頼んでもいいですよ」
「いえ。大丈夫です」
そう言うと、真里は鋭い眼差しで矢野を見た。
刑事の顔だ。

「矢野先生は先日、野田さんに十三年前の事件を知っているか。と、聞きましたよね?」
「はい」
「あの後、その十三年前の事件について調べたんです」

矢野は内心驚いていた。
野田に向けていった言葉が真里を動かしていたとは考えていなかった。

・・・これは、大きなミスをしたかもしれない。

「それで。何かわかりました?」
「おそらく、十三年前の事件と今回の事件は関係しています」
「同一犯。と、いうことですか?」
「いえ。そうではないと思います」

真里は調査の結果を伝えた。
「あの事件の捜査資料を見たのですが、あやふやなところが多々ありました。なので詳しく調べてみると、無くなった三人に戸籍上の関係は全く無かったということが分かりました。なのに世間では、姫山竹苑には息子がいるとされています。私は、その子供は姫山さんと不倫関係の女性との子供がいるのではないかと考えました」

「その女性は誰なのか分かったのですか?」
「いえ。女性は一番被害が大きかったらしくて、性別がやっとだったらしいです。・・・・でも、子供のほうは身元が分かりました・・・」

店員がコーヒーを持ってきた為、真里は話を止めた。
コーヒーを置いて去っていくのを待つと、一口啜って顔を上げた。

「三木春真さん。三木冬樹さんのお兄さんです」