矢野と三木が教室に着くと、真里の姿を見つけた。
「どうかされました?」
矢野を見た真里は表情を明るくした。

「矢野先生!」
「また、事件の調査ですか?お忙しいですね」

矢野の後ろにいた三木の口調から皮肉を感じた真里は決まりが悪そうに笑った。

「今日は矢野先生が何かご存知だったらいいなと思って来ました。十三年前にあった姫山竹苑という書道家が自殺した事件についてです」
後ろで三木が僅かに動いた。
矢野はそれを横目で見ると、真里に微笑みかけた。

「僕でよければ」
「はい。・・・・でも」
そう言うと、真里は三木をちらりと見た。

「三木君はいないほうがいいですか?」
「え!何でですか?」
「いや・・・これは一対一で話をしたいなと・・・・」
「なるほど。では、三木君には中で夕飯を作っていてもらいます」
「ちょっと先生!」

三木は納得いかないといった表情だ。
「いいじゃないですか。それに、この間はお茶を飲みに行こうと言って、結局行けませんでしたし」

それは水沢が目の前で轢かれたから。

「今からお茶を飲みに行きましょう」

すると、真里の顔が微かに熱を持った。