「捕まってもいいってことか?」
「まさか。それに、捕まるのは僕ではなくてあなたです」
「は?」
「あ。来たみたいです」

そう言いながら手を振る方には、真里の姿があった。
「彼女は野田さんの部下だそうですよ」
「何で、野田の部下とキミが・・・」
「水沢さん。十三年前にあなたがやったことについて、証拠がないと仰いましたね」
困惑する水沢を余所に矢野は話を続ける。

「でも、ちゃんと証拠はあるんですよ」
そう言うと、ジャケットのポケットから、ビデオテープをひとつ取り出した。

「十三年前の防犯カメラの映像です。あなたが爆弾を仕掛けに家に入ったところや、父の書を盗んで帰ったところもしっかり映っています」
水沢の顔色がどんどんと青くなっていく。

「これを彼女に見せると。あなたの話と、どちらを信じるでしょうか?」
微笑む矢野を見て、水沢は絶望を感じた。
もう駄目だ。
逃げられない。
「い、嫌だ!捕まりたくない!」

そう言うと水沢は走り出した。
あの二人の姿が見えなくなるところまでと。

通行人を掻き分け、横断歩道に踏み込んだ。すると、耳障りなラップ音が響いた。
信号機は赤だった。

水沢の体は中に舞った。
鈍い音と共に床に叩き落された水沢の頭から血が流れ出しだ。

「水沢さん!」
真里の叫び声が矢野の耳に響いた。