矢野は携帯電話を持ったままだった。
一定の機会音が右耳に響く。
その音がリズミカルなものになったのには、そう時間は掛からなかった。

液晶画面には水沢伊秀という文字が映っていた。
「はい」
「おはよう。翠扇君」
「おはようございます。・・・どうかされました?」
「実は。今からキミの教室に行きたいのだが、いいかね?」
「今からですか?」

隣のカレンダーを見た。
第三月曜日には何も記しがされていない。

「大丈夫です」
「悪いな。一時間後くらいにそちらに伺うから」
「わかりました」