野田が捜査一課に戻ると、真里が書類整理をしているところだった。
時計を見ると、日付が変わり、夜中の二時を回ったところだ。

「お疲れさん」
「あ。お疲れ様です」
自分の机に着くと、背広を脱いだ。
「矢野尋を調査しているみたいですね」
真里が書類に目を通しながら、そう尋ねた。
「まあな」
「何で彼を調べる必要があるんですか?」
「怪しいからに決まってるからだろ」
その回答に少しムキになった。

「どうしてですか。長江の件は片付きましたよね?」
すると、野田は面白そうに口角を上げる。
「本当にそうだと言い切れるか?」
「・・・どういうことです?」

「何で長江は、矢野のパーティーで死ぬ必要があった?」
「・・・誰かに自分が死ぬところを見てほしかったとか?」
「まぁ、それもあるだろうが。他人のイベントの邪魔して死ぬんだ。矢野を選んだのには何か理由があると思わないか?」
「考えすぎだと思いますよ」

「いや。長年警察やってきた俺が言うんだ。間違いない。ちょっと叩けば、矢野の黒い話が出てくると思うぞ」

そう言って笑う野田は、やはり、気味が悪かった。