truth

二人は会計を済ませて店を出た。
「今日はありがとうございました」
「こっちこそ。呼び出しておいて、何も奢らなくて悪かったな。今度、夕食でも一緒に食べに行こうか」
「是非、ご一緒させてください」
「おう。じゃ、頑張れよ。翠扇先生」
矢野は照れくさそうに微笑んで「はい」と、答えた。
水沢は頷くと、翠扇とは反対方向に歩き始めた。

近くのビルの駐車場を歩いていると、目の前に水沢の知らない男が現れた。
「水沢伊秀先生ですね？」
不敵な笑みを浮かべる体格のいいこの男に、水沢は気味が悪いという言葉がぴったりだと思った。

「そういうお前は誰だ？」
「申し送れました。私は警視庁の野田といいます。実は、長江源太さんについてお話を伺いたいと思いまして・・・」

「あいつは自殺したんだろ。何を話す必要がある？」
野田の横を通り抜ける。

「もし、自殺じゃなかったら！」
水沢の足が止まった。
「自殺じゃなかったとしたら」

「・・・どういうことだ？」
野田の口角が上がる。

「ここではなんですので、詳しくは車の中で」
野田は水沢の車を指差した。