矢野の教室は、毎週月曜日、水曜日、金曜日、土曜日の四日間開かれる。

今日は土曜日。朝から子供が集まり、字を書いていた。

「先生、どーですか?」
手を挙げる少年の字を眺める。
「うん。元気のいい字が出来たね」
頭を撫でると、少年は嬉しそうに笑った。
「後は、初めと終わりをイチ、ニッって押さえると、もっと良くなるよ」
「はーい!」
返事をすると、次の半紙を取り出した。

「先生こっちも出来たよー」
向かい側で少女が手を挙げた。
今度はそっちに向かった。

矢野が指導をしていると、出入り口から「お疲れ様です」と声が聞こえた。
矢野が振り向くと三木が頭を下げた。
「おはようございます」
「おはようございます。どうしました?」
矢野が近づくと、三木は矢野に小さく耳打ちした。
「水野伊秀が、先生にお会いしたいと・・・」