「良かったですね。事件が解決して」
日もすっかり落ちた時間。
車の中に座ったままの矢野の隣の席に乗ってきたのは三木だった。

「ま。本当は解決してないんですけどね」
そう言うと、三木はクスクスと笑った。

「あの尾田っていうバーテンダー。馬鹿ですよね。シャンパンを取ったのは俺なのに。まぁ、お陰で完璧な証言になりましたけどね」

矢野のほうを見るも、振り向いてくれないことに少しムッとするが、話を続ける。

「それで、バーテンダーの格好をした僕が、青酸カリの入ったシャンパンを取らせるように近くを通る。それを飲んで死ぬ。・・・・完璧!」

それにしても。と、三木は自分のポケットから一枚のコピー紙を取り出した。
右端には『遺書』と書いてあり、先ほど真里が言った様なのと同じ内容の文章が並べられていた。

『私は過去に大きな過ちを犯してしまいました。それは、法では裁くことが難しい過ちです。けれど、私は己が許せません。私は己で、己を裁きたいと思います。生徒の皆さん御免なさい。どうか、これからも日々精進してください』

「この、どこから見てもあの男の字を矢野先生が書かれたんでしょ?筆跡鑑定士をも騙すなんて。流石です!」

矢野はコピー紙を受け取った。