その日は一日、桃奈が俺に話しかけてくることはなかった。
「うわ~……桃ちゃんすげぇ。
今日で何人目?
ああやって桃ちゃんのとこに来た男」
「……………………」
休み時間になる度に桃奈のところに男が訪ねてくる。
楽しそうに話す桃奈と男。
男は桃奈が話し出すと、顔を赤くして嬉しそうに笑っていた。
きっと、また男心をくすぐるようなことでも言ったんだろう。
多分アイツは明日か明後日には桃奈に告白しに来る。
そして、桃奈にフラれる。
「何でフラれんのが分かってんのに告白するんだろうな……」
「それぐらい桃ちゃんにズキュン!とハートを射止められたんでしょー。
桃ちゃん、男を喜ばせるの上手いからな~」
それに可愛いし、と馨が付け足す。
……ただ愛想振り撒いてるようにしか見えないけどな。
高校に入ってからの桃奈は俺にはよく分からない。
何がしたいのかなんてさっぱり。
まぁ、詮索するなって言われたからこれ以上聞くつもりはないけど……。
だけど、やっぱり……
「保坂君!」
俺を呼ぶ声が聞こえて、俺は振り向いた。

