「あー……そっか。
こうやるのか……」


俺のノートを見ながら納得したように頷く桃奈。

馨は元気に他のクラスメートのところへ飛んでいった。


「……なぁ、桃奈」

「んー?」


桃奈がノートに視線を落としたまま返事をする。


「何であのサッカー部のキャプテンのことフッたんだよ」


……すると、桃奈は静かにノートから顔を上げて俺の方を見た。

……その顔に笑顔はなかった。


「何でって……好きじゃないから」

「好きでもない男、たぶらかしてたのかよ」

「先に話しかけてきたのはあっちだもん……。
……あたしはただ話し相手になってただけ」

「あのなぁ……」

「……大体、何で悠がそんなこと聞くの?」


桃奈が冷たい視線を俺に向けた。


「俺はただお前を心配して……」

「……悠にだけは心配されたくない」

「え……?」


桃奈は静かにノートを俺の机の上に置いた。


「……あたしがどんなことしてたって、悠には関係ないでしょ。
これ以上詮索しないで。
……ノート、ありがとう」


……それだけ言って、桃奈は俺から離れていった。