「聞いたよ、桃ちゃん!
サッカー部のキャプテンとの話!」
「え?
あぁ……うん、あれね」
馨がサッカー部のキャプテンの話を始めた途端、それまで笑顔だった桃奈の表情が少し変わった。
「すごいね~、桃ちゃん!」
「……そんなことないよ。
……あ、そうだ!
悠、宿題見せてよ!」
「はぁ?また?」
「悠、数学得意でしょ?
最後だけ分からないの!」
「お前な……」
「……お願い」
……桃奈は話題を変えたがってるようだった。
サッカー部のキャプテンの話から、何でも良いから何か違う話へ。
「……分かったよ」
いつもそうだ。
周りから桃奈が男をオトした話を聞いても桃奈自身が自分からそれを話すことはない。
むしろ、桃奈はその話をするのを避ける。
「相変わらず綺麗だね~、悠のノート」
普段はこうやって笑顔を振り撒いてるのに……男の話になると、桃奈の顔から笑顔が消える。
それを周りが気づいてるのかどうかは知らないけど……俺はそれが気になってしょうがない。

