「俺……確かに昔は大人びた子が好きだって言ってたけど……。
……あれ、好きっていうより憧れだった」

「憧れ……?」

「今思えばな。
……俺……多分昔からずっと桃奈が好きだった。
それが自然すぎて気づかなかったけど……。
……小学生の時に……桃奈が俺をヒーローだって言ってくれたあの時から……ずっと好きだったんだと思う」


……桃奈は俺の目を見ると、ゆっくり微笑んだ。


「……あれ……覚えてたんだ」

「忘れるわけないだろ。
……桃奈の方が忘れてると思ってたし」


桃奈はゆっくり首を横に振った。


「……覚えてるよ。
あの時……悠、本当にカッコよかったんだから。
……あたしが好きになったきっかけだから」


……桃奈……。


「少し遅くなったけど………まだ間に合う?」

「……どうかな」


そう言って微笑む桃奈は、本当に小悪魔のようで。


この笑顔にたくさんの男がやられてきたかと思うと、ちょっと複雑だけど……


でも……


「……もう離すつもりはないから」


……俺は小さな小悪魔をそっと抱きしめた。


「っ……悠……泣いていい?」

「……いいよ」


もう強がらなくていい。

耐えなくていい。

……俺が、全部受け止めるから――