「じゃあ……新しく好きな人ができたってわけじゃないんだよな」

「そうだけど……。
……もう帰ってもいい?
あたし……悠の顔見たら泣きそうになるから」

「……いいよ、泣いて」

「え?」

「……泣いてもいいから、俺の方見てろ」

「何言って……」

「好きだよ」


桃奈が大きく目を見開いた。

……俺はじっとまっすぐ桃奈を見た。


「……やっと気づいた。
遅すぎたけど……。
……俺は桃奈が好きだ」

「……宮山さんは?」

「え……?」

「宮山さんが好きなんでしょ?
ていうか……悠が好きなのってああいう人だし……」


そう言って桃奈はうつ向く。

大きな瞳は少し潤んでいた。


「……あれはただの噂。
宮山には告白されたけど……断った」

「え……?」


桃奈が驚いたように顔を上げて俺の顔を見た。