急いで階段を下り、また廊下を走る。
こんなに……何かに必死になったのは初めてかもしれない。
それぐらい俺は桃奈が……
「桃奈!!」
昇降口のところで桃奈を見つけた。
すぐさま俺が叫ぶと、桃奈は驚いたように振り向いた。
「悠……?」
「っ……はぁっ……ちょっと待って……」
桃奈の前までくると、俺は乱れた息を整える。
桃奈が不思議そうな顔で俺を見た。
「どうしたの?
そんなに急いで……」
「桃奈……好きな人ができたって……マジ?」
「え?」
桃奈は一瞬驚いたような顔をしたあと、すぐに小さく口元を緩めた。
「……言霊って知ってる?」
「……え?」
「口に出してたら本当のことになるかなって……それだけ」
言霊……。
俺はホッと安心したように胸を撫で下ろした。

