ケータイを片手に廊下を歩く。
画面に出ているのは、メールの作成画面。
……もう家に帰ってるよな。
アイツ、部活やってないし……。
……何て書こうか。
とりあえず、外に出てきてもらって……
……メールを送るのにこんなに悩んだのは初めてだ。
宛先、安西桃奈のメールは白紙のまま止まっている。
……その時だった。
「あーあ……ショック……」
「元気出せって」
ほとんどの生徒がいなくなった静かな廊下に二人の男子生徒が立っていた。
「見込みないって分かってたんだけどさー……みんなフラれてるし」
「まぁ……そうだよな」
「だけど、俺が聞いてたのと断り方が違ったんだよ……」
断り方……?
つーか、何の話……?
「いつもなら“好きになれないから”って言うらしいんだけど……」
「安西もはっきり言うんだな」
安西……?
「でも、俺の時は“好きな人ができたから“って言われて……」
「安西に?」
好きな人……?
できた……?
「なんかここ最近はそうらしいんだよな……。
本当に好きな人できちゃったのかなー……」
……その話を聞いた俺はその二人の方に近づいていった。
「……おい」
「あ……保坂?
どうし……」
「桃奈は?」
「え?」
「桃奈、今どこにいる!?」
その時の俺はすごく必死な顔をしていたように思う。
自分でも驚くぐらいに……必死だった。
「安西なら……まだ校内にいると思うけど。
俺、ついさっき別れたばっかりだから……」
……それを聞いて、俺は走り出した。
無我夢中で……廊下を走った。

