「あれ……保坂君?」
突然廊下の方から声がして振り向くと、教室の扉を開けて宮山が顔を出していた。
「宮山……」
「何してるの?」
笑顔で俺に近づいてくる宮山。
宮山は俺の前の席に座って、俺の方を向いた。
「……ちょっと懐かしい話を思い出してただけ」
「懐かしい話……?」
「そ。アイツはもう……覚えてないだろうけど」
あの日のことは覚えていても、会話までは覚えてないだろう。
むしろはっきり覚えてる自分が不思議なくらいだ。
だけど……どこかで桃奈に覚えていてほしいと思っている自分がいる。
もう一度ヒーローと言ってもらいたい……なんてガキみたいなことを考えてる自分が……確かにいる。
「アイツって……安西さんのこと?」
「……あぁ」

