小悪魔ちゃん


……あの日。

帰り道……桃奈は俺に向かって笑顔で言った。


『悠君はヒーローだね!』

『ヒーロー?』

『うん!
困ってる人がいたら助けてくれる、正義のヒーロー!』


小五にもなってヒーローとか言われても……とは思ったが、桃奈の無邪気な笑顔でそう言われると素直に嬉しかった。

そして……俺はあの時、確かに桃奈に言った。


『また安西が困ってたらいつでも助けてやるよ』


ちょっとカッコつけたくて言った言葉。

でも……桃奈は笑顔で大きく頷いてくれた。




「……助けてやる……か」


昔のことを思い出しながら……ポツリと呟く。

いつの間にか放課後で……教室には誰もいなかった。


「……はぁ」


誰もいない教室で大きくため息をついた。