小悪魔ちゃん


……その日から桃奈は俺に話しかけることはなくなった。

いつもなら馨が大声で呼べば、こっちに来て一緒に話すのに。

遠くで静かに笑みを浮かべるだけで、俺に近寄ろうともしない。


……ただ、それでも桃奈の噂は絶えなかった。


今度は野球部、バスケ部、生徒会長と……それはもう様々な分野で活躍する男達。


桃奈は高校に入って変わってしまったと思った。

……だけど、そうさせたのは他の誰でもない……俺だった。


いつも俺に見せていた笑顔の裏で……桃奈はどんなことを考えていたんだろう。

小学生の時も中学生の時も……俺が別の人を好きだと知った時、桃奈はどんな気持ちだったんだろう。


そして俺は……桃奈のことをどう思っているんだろう。


小学生の時……桃奈が転校してきたあの日から、桃奈のことはそれなりに見てきたつもりだった。

だけど、結局俺は桃奈のことは何も分かっていなかった。


「悠ちゃん、そんな真面目な顔して何考えてるのさー」

「え?
……あぁ……何でもない」


……すると、馨は何かピンとひらめいたように笑顔で俺の顔を見た。