「……それでも、好きなら諦めずにぶつかっていけばいいじゃん。
見た目だけで諦めんのかよ」
「……だって、その人が好きになった女の子って……みんな大人びた子ばっかりなんだもん」
……桃奈が顔を上げて俺の顔を見た。
「……小学生の時は中学生に間違われる程の大人っぽい子を好きになって。
中学生の時は……読モのスラッとした綺麗な子を好きになって……」
「……え?」
……聞いたことのあるような話。
……今朝、桃奈が馨にしていた話。
「今だって……すごく美人な子と噂されてるし。
………でしょ?」
……桃奈が俺を見る。
……これは間違いなく俺の話で……桃奈はまっすぐ俺の目を見つめていた。
「……ずっと好きだった。
悠のことが……ずっと」
……桃奈の瞳が少しずつ潤んでいくのが分かった。
「桃……」
「……何も言わなくていいよ。
返事なんていらない。
……本当はずっと言うつもりなんてなかったから」
桃奈は机の上に置いてあったカバンを手に取り……肩にかけた。
「……もう帰るね。
……バイバイ」
桃奈は頑張って笑顔を作っていた。
……その大きな瞳に涙を浮かべながら。
そして……静かに教室を出ていった――

