「……そう思ってんだったら、やめればよかっただろ」
「……やめられなかった。
……どうしても」
……桃奈は頬に手を当てたままうつ向いた。
そして……ポツリ、ポツリと話し始めた。
「……男の子は昔からいつもあたしの周りに寄ってきたよ。
可愛いって言ってくれて……告白もいっぱいされて……」
でも……、と桃奈が続ける。
……桃奈の顔から苦笑いさえも消えた。
「……本当に好きな人は一度も振り向いてくれなかった」
好きな人……。
桃奈の口からそんな言葉は初めて聞いた気がする。
……いたのか。そんな人が。
「……その人はいつも違う子を見てた。
……だから、諦めようとした。
でも、なかなかあたしの中からいなくなってくれなくて……。
……他に好きな人ができれば忘れられるんじゃないかって思った」
……だからか。
……桃奈は力なく頬を押さえてた手を下に下ろした。
「……けど、ダメだった。
周りに男の子がたくさん寄ってきて、いくらあたしのことを好きって言ってくれるいい人でも……好きになれなかった」
……だから桃奈は話したがらなかったのか。
周りがいくら囃し立てても……桃奈は絶対にフッた男のことを話そうとはしなかった。
……それはきっと、罪悪感があったから。

