「何でそんなこと……」
「……その子ね、彼氏に別れてほしいって言われたんだって。
理由は……好きな人ができたから。
……それがあたしだったんだって」
「お前……まさか、その彼氏に……」
「あたしは何もしてないよ。
顔だって知らないのに」
「……だったら、そんなの桃奈には関係ないんじゃ……」
勝手にその彼氏が桃奈のことを好きになっただけだろ。
理不尽もいいところだ。
「……しょうがないよ。
その子はあたしが彼氏を引っかけたって思ってるみたいだし……。
……そう思われても仕方ないし」
……桃奈は窓の方を見て……窓ガラスに映る自分の顔を見て失笑した。
「……分かってたのにね。
こんなことしてたら、女の子に嫌われることぐらい……」
桃奈はそっと赤くなった自分の左頬を撫でた。
「……あたしだって……こんなことしたくなかったよ」
こんなこと……。
……男をオトしてフることか。

