「……桃奈」
俺が名前を呼ぶと、桃奈は驚いたように振り返った。
「悠……?
どうして……」
「……忘れ物」
「そっか。
おっちょこちょいだね、悠も」
そう言って笑う桃奈の左頬が……少し赤くなっていた。
腫れてる……?
……俺の視線に気がついた桃奈が慌てて手で左頬を隠した。
「お前、それ……」
俺がそう言いかけると……桃奈は頬を押さたまま苦笑いした。
「……殴られちゃった」
殴られたって………
「……誰にだよ」
「……女の子。
殴られたって言っても、ビンタされただけなんだけどね」
苦笑いする桃奈。
……その頬と笑顔が妙に痛々しかった。

